先日のクラプトンを観に行って思い出したコンサートネタをひとつ。
高校生のとき、スティービーワンダーが来日するっていうんで、友人のI君が、一緒にコンサートへ行こうと私を誘ってくれたんです。
私はそれまで、そのような海外の一流アーティストのコンサートなど一度も行ったことがなかったのですが、スティービーワンダーといえば一流も一流、そんな大物アーティストの生ライブ、滅多に観られる機会はないかも知れません。
「スティービーワンダーか・・・観に行って損はないかも・・・」
そう思い、当時のチケットはA席でも(S席じゃないですよー)たしか6千円ぐらいだったと思うのですが、高校生としては決して安くはないそのコンサートに、思い切って行くことに決めたのです。
しかしながらその頃の私は、偉大なミュージシャンとしてスティービーワンダーを認識してはいたものの、彼の音楽をそれほどよく知っているわけではありませんでした。
超有名な曲をほんの数曲、聴いたことがあるだけだったんです。
そこでコンサートまでに少しでもスティービーの音楽を聴いておこうと思い、買ったのが「ミュージックエイリアム」というベストアルバムでした。
「迷信」「サンシャイン」から発売当時、新曲だった「ザットガール」「ドゥアイドゥ」まで、主に70年以降の重要なレパートリーをきっちり押さえているこのアルバムで、改めてスティービーの才能豊かな一面に触れ、目前に迫ったコンサートへの期待は高まるばかりです。
これにしたって当時LP2枚組で4千円ぐらいでしたので、高校では表向き禁止されていたアルバイトをして、少しばかりのお小遣いを稼いでいたとはいえ、チケット代と合わせての計1万円ほどの出費は、かなり痛かったと思います。
そんなわけで私にとっての、この一大イベント、高いチケット代を払って、その場限りではもったいない。
ぜひとも当日は、ライブを録音して来なければ・・・と考えてしまったんですね(笑)。
いや、もちろん、カメラやテープレコーダーなどは、会場に持ち込んではダメってことは知っていたんですよ。
でもなんとかなるだろ、って・・・チャレンジャーというか・・・バカですねえ(笑)。
それで、どうやったら会場へカセットレコーダーを持ち込めるか、友人のI君と一緒に考えたわけです。
手ブラで行って、片手にカセットレコーダーじゃ、当然、入り口でアウトは分かりきってますからね。
まずカセットレコーダーを、どこに隠して(ってオイオイ)持って行くか、なんですが、その頃の高校生はみんな、通学に大きなスポーツバッグ(ボストンバッグ?)を持っていたんですよね。
ですから学校帰りを装って、そのバッグに入れて行けば怪しまれないのではないかということになりました。
もっと見つかりにくい、凝ったやり方もあったかも知れませんが、あまり故意的なことをすると(十分、故意的だが・・)、もしバレた時にあまりにもバツが悪いので、まあソコソコに、ということで・・・。
ちょうどコンサート当日は平日だったので、昼間は実際に学校へ行ったんですが、コンサートへ行くときには、別にぜーんぜん学校帰りでも何でもなくて、ちゃーんと一旦、家に帰って・・・せっせと仕込みました(笑)。
ただスポーツバッグの奥にカセットレコーダーを忍ばせておくだけでは、入場の際、持ち物検査でバッグの中まで調べられるでしょうから、きっとすぐに見つかってしまいますよね。
そこで学校帰りの高校生が持っていても不自然ではないもの・・・そうだ、弁当箱の中にカセットレコーダーを入れておけば、見つからないのではないかと・・・。
そして私はそれをバッグの奥ではなく、教科書や体操服など、無造作に詰め込んだ荷物の一番上にさり気なく置いたのです。
さり気な~~く・・・ここポイントです(笑)。
いずれにしても夕方、コンサートへ出かけるのに制服を着て通学用のバッグまで持って家を出る息子の姿を、母親が不思議そうな顔をして眺めていたことは言うまでもありません(笑)。
私とI君は、コンサート会場である愛知県体育館へ開場時間の少し前に着いて、入場待ちの観客の列に並んでいました。
そのうちそろそろ持ち物検査をしながら、前の方から少しずつ入場という段になって、私たちは、すぐ近くにいた会場スタッフらしき二人のお兄ちゃんが雑談しているのを聞いてしまったのです。
「・・・この前のコンサートの時さぁ・・・カセットを弁当箱に入れて持ち込もうとした奴がおってさぁ・・・」
「おる、おる、そういうの時々おるよ、ハッハッハ・・・」
うげーっ! まさに今の自分、そのまんまじゃーっ!・・・
やっぱり誰しも考えることは同じだったのね・・・
さすがプロ、もしかして目の前にいる自分たちのことも、すべてお見通しかも・・・?
それで一気に心臓バクバクとなり・・・そこからはもうドキドキもんでした。
以下、私とI君の会話・・・
「なあ・・これ、もし見つかったらどうなるんかな・・・」
「たぶん、没収だわ・・・入場口の横に『強制預かり所』、あるで・・・」
「ほんなら最悪、会場に入れてもらえんくなる、ってことはないんかな・・・」
「んー、チケット買っとるで・・・たぶん、それはないんじゃない?」
「ふーん、そっか・・じゃあ・・・・・・
・・・バレても元々かーっ!」(ってオイオイ、コラコラ)
そうこうするうちに私たちも入場口のところまでやって来ました。
この時点ではもう心臓は飛び出しそうなぐらいバックン、バックン・・。
入場係の人がお約束どおり、
「バッグのなか、失礼しまーす」
と言いながら私のスポーツバッグの中を覗き込んで来ました。
「あの、いや・・学校の帰りなもんで・・・教科書とか・・ですけど・・・」
そういう私の言葉にはお構いなく、その係の人はバッグの奥までシッカリ確認しようとして、手でバッグの中の荷物を掻き分けようとしたわけです。
で、問題の弁当箱ですが、それは確かにパッと見ただけでは、もちろんただの弁当箱なんですが、手に持たれてしまうと、不自然な重量感と、微かにカタカタとする振動で見破られてしまうかも知れません。
そこで私は、係の人に触れられる前に、一番上に置いてあった弁当箱と体操服を自らの手で持ち上げ、さも、
「さあ、奥のほうもシッカリ見てください」
とでもいう風にさり気なく、残ったバッグのほうだけを差し出したのでした。
その結果・・・見事にセーーフッ。
「ね、何もないでしょ・・・」
ってな顔して、出来る限り自然な態度で振舞いながら、入場ゲートを通過したときには
内心・・・ホーーーっ・・・と。
I君もなんとか無事に通過して、二人はもう、ヘナヘナになりながら座席に着いたのでありました。
そして開演の少し前、薄暗くなった観客席の足元からゴソゴソとレコーダーを取り出し、録音ボタン、ON!
「やったぞ! うまく行った!」
しかし2時間ほどのライブの間に、当然テープが終わればひっくり返さなくてはならないし、両面終わればテープを入れ替えなくてはならないし、で・・・
コンサートの途中、制服姿の二人の高校生が、代わる代わるしゃがみこんでゴソゴソとやっている姿は、近くにいた大人たちには、どう映ったのでしょう。
肝心のスティービーのライブパフォーマンスは、とても素晴らしかったです。
私が特に感動したのは、彼が吹くハーモニカの音色で、「可愛いアイシャ」などでのハーモニカのソロは、ライブならではの生々しさで心に迫ってきて
「あーっ、やっぱり来て良かったーっ」
でもって、この感動のコンサートは、しっかりとカセットに録音もしたし・・・うん、大満足。
しかし録音したテープを楽しみに家に持ち帰って聴いてみると・・・ザワザワした雑音のなか、遠くで聴こえる音楽はボコボコとした音で・・・なんじゃこりゃ? とても聴けたもんじゃありませんでした。
最後に・・・やっぱり規則は守りましょうね(笑)。
最近のコメント